目次
- あなたのコンフォートゾーンはどこ?
- コンフォートゾーンは排他的
- コンフォートゾーンの外に出てこそ成長する
- 現状における成長の眼界
- コンフォートゾーンを広げていくと?
- コンフォートゾーンを広げる時についた嘘
- 広げる?それとも、新しく作る?
あなたのコンフォートゾーンはどこ?
あなたがいま居心地がいいと感じる物理的、心理的空間であるコンフォートゾーンを思い浮かべてみてください。
まず、物理的なところで身近な空間を考えると、自宅、あるいは自分の部屋はあなたのコンフォートゾーンでしょう。学校や職場においてもいつも自分が居心地良く過ごしている場所ならコンフォートゾーンだと言えると思います。
心理的な空間では、家族や親しい友人との関係はコンフォートゾーンである場合が多いでしょう。職場の上司や学校の先生との関係は、コンフォートゾーンであるかもしれないし、そうでないかもしれません。
コンフォートゾーンは排他的
コンフォートゾーンは、好きなものや大事にしているものの集まりですから、そのコアな部分というのはとても個人的なものです。自分の部屋や隠れ家に一人でいる時に自分だけが楽しめれば良いというようなプライベートな空間です。
好みや価値観は人それぞれですから、特にコアな部分はかなり排他的で、ほかの人が入りにくい空間です。
人は一人では生きていけないので、社会との関わりについてもコンフォートゾーンがあります。コンフォートゾーンは本質的には排他的ですが、自分のコンフォートゾーンに幅広く他者を取り込むことができるなら、そのコンフォートゾーンはより開放的だと言えるでしょう。
コンフォートゾーンの外に出てこそ成長する
コンフォートゾーンが排他的であるということは、基本的に新しいモノを取り入れたくないということです。自分が居心地が良いと思っている空間に、急に知らない外国人が入ってきたら、不安や緊張を感じるでしょう。職場で急にこれまでにやったことのない仕事を頼まれたら、どうすれば良いか分からず不安になり、なぜ自分がやらなければならないのかと拒絶し怒りが湧いてくることもあるでしょう。そんな風にコンフォートゾーンを守ろうと、排他的な態度になるのです。
でも、新しい人やモノ、または新しい領域へのチャレンジと向き合わずに、あなたが成長するチャンスはあるでしょうか?自分の可能性に気づいたり能力を試したりする機会があるでしょうか?
実はコンフォートゾーンの中に居たままでは成長が出来ないのです。
現状における成長の眼界
「いや、そんなことはない。今の場所でも、十分に成長できるはずだ」という人がいるかも知れません。
でもそれは、あくまで現状の最適化の範囲でしかなく、あなたのポテンシャルを十分に引き出すこととは大きく異なります。
「現状の最適化」というと、よく職場で人材育成や事業拡大のために採用されるステップ・バイ・ステップ方式を思い出します。今より少しストレッチした目標を立てて、努力してそれを達成したら、また次のステップへ向かうという方法です。
一見この方法はリスクが少なく、自信がない人でも取り組みやすいので良いとされていますが、コーチであれば絶対勧めない方法です。
なぜなら、この方法では現状にますます縛られてしまうからです。現状の中で最も良いとされるところまでは、人や事業を成長させることは出来るかも知れませんが、それはどれだけ頑張っても現状の中です。現状を超えて圧倒的な成果や成長を期待することは出来ません。
ステップ・バイ・ステップ方式では、コンフォートゾーンを少しずつ広げているだけで、元のコンフォートゾーンとほとんど変わっていないのです。
コンフォートゾーンを広げていくと?
この「コンフォートゾーンを広げていく」というのは、「新しいコンフォートゾーンを作っていく」というのとは全く違います。ここで「コンフォートゾーンを広げていく」というのが、どういうことなのかを見てみましょう。
例えば架空の話ですが、あなたがそこそこの規模の会社に勤めていて、その会社には創業時から長年にわたって安定的に稼いできた祖業があるとしましょう。祖業で8割以上の売上高を稼いでいたのですが、5、6年前に他社からの転職組数名がアイディアを持ち寄り、面白いことをやろうと会社に自主提案して新規事業を始めていました。
その転職組は仕事は出来るものの、今一つ社風に合わず少し浮いた存在でした。元々経営陣も彼らの扱いに困っていたこともあり、赤字を出さないのであれば良いだろうというので、事業化を了承したのです。
ところが、コロナ禍以降、世の中が大きく変わり、これまでのように祖業で稼ぐことが難しくなってきました。一方、コロナ前から細々と始めていた新規事業がここに来て急に稼ぎ出したのです。
これまで会社の中での出世は祖業を担ってきた人が真っ先に昇進していくのが慣わしだったのですが、新規事業に勢いが出て来たことで、最近社内がざわつき始めました。
ここからが「まさか!」という展開なのですが、今、会社を率いている会長、社長やほとんどの役員は祖業を担って来た人たちです。彼らは新規事業のことはよく分かりませんし、最初の頃は「あんなものが儲かるわけがない」とバカにしていました。それなのに、社内における祖業と新規事業の立場が近々逆転するかも知れない危機(?)になっているのです。
経営陣としては、本来、会社全体の業績が良ければそれで良いはずなのですが、
- 新規事業のことはよく分からない → コンフォートゾーンの外側
- かつての自分の直属の部下たちが、これから会社の中で冷遇されてしまう→ 身内はコンフォートゾーンの一部
と新規事業がコンフォートゾーンを乱していることから、慌てた守旧派経営陣は、なんとこの新規事業を他社へ売却してしまうのです。
要するに、じり貧の祖業にしがみついて、それで会社がダメになるリスクを取る方がコンフォートゾーンなのです。
これは私が創作した架空の話ですが、似たような話を聞いたことがないでしょうか?
コンフォートゾーンを広げる時についた嘘
新規事業を了承したのは、コンフォートゾーンを広げる行為だったということです。今のコンフォートゾーンを乱さない範囲であれば、会社全体に貢献することだというので、経営陣も祖業に携わる社員たちも受け入れてきたのです。ただ、事業の内容はこれまでと全く違い、取引先、業務プロセス、業界の商習慣も異なることから、なんとなく違和感は感じていたのでした。
それでも新規事業の売り上げ規模が小さい時は良かったのです。自分たちのコンフォートゾーンを乱されることもありませんでした。でも、祖業の売り上げが減ってきて、ただでさえ、自分たちの自尊心が傷つけられていく中で、新規事業が大きく売り上げを伸ばし会社の中での発言権も強くなり始めました。こうなると、祖業に関わってきた人たちは心穏やかではいられません。
そして会社に余裕があるうちに、祖業に携わるいわゆる守旧派が自分たちの生き残る道を考え始めるのです。新規事業にいる人たちは、最初からよそ者扱いです。
これがコンフォートゾーンを広げる行為であり、コンフォートゾーンの排他性です。
なんだか怖くはないでしょうか?
経営陣の「赤字を出さなければ良い」という所に嘘が混じっていたのです。赤字はもちろん困るのですが、それよりも、自分たちの今のコンフォートゾーンを乱さない範囲で、ということだったのです。
広げる?それとも、新しく作る?
さて、あなたが「成長したい!」「変わりたい!」と思った時、それはコンフォートゾーンを広げることを望んでいるのでしょうか?それとも、新しいコンフォートゾーンを作って行くことなのでしょうか?
もし現状に不満があり、根本的に解決したいなら、現状の外側にゴールを設定して新しいコンフォートゾーンを作っていくしかありません。