エフィカシーを上げて、ゴールに向かう (12)

目次 

  1. 次に必要なのはエフィカシー 
  2. エフィカシーとコンフォートゾーン 
  3. 脳のカラクリ 
  4. エフィカシーを高めてゴールに向かう 

次に必要なのはエフィカシー 

前回、現状の外側にゴールを設定するところまでの話をしました。では、次に何をすればいいのでしょうか? 

ゴールを設定して「いつかゴールを達成できたらいいな!」と期待しているだけでは、いつまで経ってもゴールに近づくことはできません。ゴールに近づくには、そのためのエネルギーが必要ですし、ゴールに到達する方法も見つけ出さなければなりません。 

ところで、「いつかゴールを達成できたらいいな!」という言葉を聞いて、あなたはどんな印象を持ちますか?この人はゴールを達成できそうだと感じますか?何かちょっと頼りない感じがしませんか? 

少なくともコーチングでいうところの、エフィカシーは高そうではありません。エフィカシーというのはゴールに対する達成能力の自己評価のことですが、この人自身が現時点でゴールを達成できるという自信があるようには感じられません。 

ゴールを達成するためには、ゴールに見合うエフィカシーを備えていなければならないのです。 

エフィカシーとコンフォートゾーン 

例えばあなたは、東京に本社がある大企業に勤めているとします。毎日忙しく働いていて、毎晩仕事帰りに新橋の飲み屋で一杯飲んでから帰宅するのが精一杯の息抜きになっています。そんなあなたのゴールは、自分が中心となり様々な分野で活躍する世界のトップ人材を巻き込んで、新しいヘルスケア・ビジネスを確立して、世界中の人たちの健康問題を大きく改善することだったとします。 

あなたにとってのコンフォートゾーン(居心地のいい物理的・心理的な空間)は、東京の職場と新橋の飲み屋の世界です(新橋で飲むのも楽しいですよ!)。これからお付き合いしていかなければならないのは世界のトップ人材なのですが、彼らのコンフォートゾーンに入っていけるでしょうか? 

彼らのコンフォートゾーンは、3カ国語以上の言語を操り、高級車を何台も持ち、ニューヨークの高級マンションに住んでいながら、スイスの別荘で休暇を過ごし、1年の半分はプライベートジェットで世界中を飛び回りながら仕事をするのが普通であるような世界です。 

今のあなたにとっては、別世界のように感じるでしょう。そもそもどのようにして彼らと知り合いになればよいのか、会えたとしてもどんな場所で会えばいいのか、会える場所は自分には場違いだと感じるような所ではないか、そこでどんな風に振る舞えばいいのか、などと不安で一杯になりそうです。まさにあなたのコンフォートゾーンの外側です。 

とはいえビジネスなのですから、大企業に勤めているあなたならルートを見つけて面会のアポは取れるでしょう。問題は会った時に、自分本来の能力を発揮して、自分らしく振る舞い、相手に信用してもらえるかどうかです。そして、あなたのゴールを達成するために、彼らが持つリソースや時間を快く提供してもらったうえで、パートナーとして働いてもらわなければなりません。そのためには、コンフォートゾーンは共有出来ていた方が良さそうです。 

どうでしょう。対等な立場で、あなたのゴール達成に向けて協業していけそうでしょうか? 

世界のトップ人材と言われるような人たちと負けないくらい高いエフィカシーを持つ必要がありそうです。なぜなら、エフィカシーの高さがその人のコンフォートゾーンを決定するからです。 

すなわち、もしグローバルの第一線で活躍しているトップ人材と協業しないと成し遂げられない程のゴールがあるなら、まずエフィカシーを高めてコンフォートゾーンを変えないと、いつまで経ってもそのゴールには辿り着けないということです。 

脳のカラクリ 

では、エフィカシーを高めるにはどうすればいいでしょうか? 

もちろん、プロのコーチにエフィカシーを高めるサポートをしてもらうのが一番確実な方法です。でも、すぐにプロのコーチがいない場合には、セルフコーチングの知識を使って自分でエフィカシーを高めることも可能です。 

さて、エフィカシーを高める方法を話す前に、脳のカラクリについて触れておかなければなりません。 

元々私たち人間の脳は、周囲の環境から受け取った情報を全て認識しているわけではありません。光であれば、赤外線から紫外線までの範囲の内側にある極限られた光の波しか見えませんし、音であれば、犬やコウモリ、イルカなどには聞こえる高周波数の音が人には聞こえません。 

このように感覚器官で受け取れる情報は限られているうえに、私たちの脳はその時、自分にとって重要なものしか認識に上げません。脳に情報フィルターの働きをするRASReticular Activating System、網様体賦活系)があって、認識にあげる情報を選別しています。 

人は、脳以外の臓器の進化は豚と対して変わらないのですが、脳だけが異常に進化した生き物です。もし、身体が受け取った情報を全て処理しようと脳をフル回転させると、そのために必要なエネルギーは膨大で、それほど進化していない消化器系では外部から十分なエネルギーを取り込めず、餓死してしまいます。だから、脳はとても手抜きをしているのです。 

ですから、あなたは目の前の世界を見ているつもりでも、そもそもありのままは全く見ていませんし、あなたとは重要なものが異なる他人とは、全く別の世界を見ているということです。 

あなたが今見ていると思っているものは、実はいい加減な、あやふやなもので、そういう意味で頭の中で想像して作り上げたイメージと大差ありません。 

エフィカシーを高めてゴールに向かう 

さて、話をエフィカシーの高め方に戻しましょう。 

まず、ゴールを達成した時の事を考えて欲しいのですが、ゴールを達成した世界をそのまま想像することは出来ないと思います。なぜなら、ゴールは現状の外側に設定しているので、スコトマになって見えないからです。 

でも、その途轍もないゴールを達成した時には、あなたは今より大きく成長していることは確実です。その時の自己イメージ(自分の姿)やコンフォートゾーン(自分が見ている周りの世界)なら、ぱっとイメージ出来なくても、世の中に転がっている映像や成功者のイメージから上手に切り取って、ぴったりのイメージを作っていくことは出来るでしょう。 

もしそれが難しいようなら、未来にゴールを達成した自分なら、今現在、すでに「こうなっていないとおかしい!」というイメージを想像してみてください。ゴールは現状の外側にあるのですから、とても遠くにあって達成までに時間がかかるかも知れません。それなら尚更、少しでもゴールへの歩みを早めるために、未来にゴール達成する自分なら、今、「こんなスキルが身に付いていないとおかしい!」「人に対してもっとこんな風に接しているはずだ!」「これくらい資金がいま手元にあるはずだ!」などと今あるべき状態をイメージしてください。 

そして、そのイメージに楽しい、嬉しい、清々しい、誇らしい、気持ちいいなどのポジティブな感情を貼り付けてしっかりと味わいます。今、現実にそうなっているとリアルに、臨場感高く感じてみるのです。 

すると、ゴールを達成出来るという気がして来ませんか?ゴール世界に臨場感を感じるようになってくると、エフィカシーが上がって来ます。 

この時、今の現実と頭の中でイメージした世界とはギャップがあるはずです。ここで脳は、例え頭の中でイメージした世界でも、そちらの臨場感の方が高ければ、それを「現実」として認識します。 

こうして、未来の自分を臨場感高く感じているあなたの脳が、現実のあなたとの間にギャップを感じ取ると、そのギャップを無意識が埋めようとして、ゴールへと向かうエネルギーが生まれてくるのです。