ホメオスタシス

先日、NOTEに「なりたい自分になるための無意識の使い方」というタイトルのブログを書いた。

実はこれは、「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」について書いたものだ。

この「ハンマー・ブログ」を読んでいる人は、ある程度コーチングに関する知識があるという前提だから、「ホメオスタシス」についてすでに知っているという人もいるだろう。以前にNOTEでも、体温調整を例に出して説明したことがある。

繰り返しになるが、その体温調整の話から始めてみよう。

人は周囲の温度を感知して、体温を一定に保つように身体を調整している。真夏のように周囲の温度がかなり暑いと、概ね36度から37度の間に体温を保つように、汗をかくなどして体温が上がらないよう調整する。逆に寒ければ、体がガタガタ震えて筋肉を動かすことで熱を生み出し体温が下がらないように調整する。また、体温調整以外にも、呼吸や心拍なども同様に、身体を一定の状態に保つための調整が行われている。そのような働きをホメオスタシスという。

このホメオスタシスは動物の体でも働いているが、人には動物にはない特徴がある。人は脳の中でも特に思考を司る前頭前野が非常に発達していて、頭の中で考えること=情報空間についても物理的な身体と同様にホメオスタシスが働くのだ。

コーチングでは、このホメオスタシスの働きをゴール達成に利用する。ゴール世界の未来の自分を頭の中で想像してみよう、というのは正にホメオスタシスの働きを利用するための大事な作業だ。

どういうことかというと、ゴール世界の未来の自分が、例えそれが頭の中で想像したものであっても、今この瞬間に実感している現実の自分よりもリアルに感じられたら、脳は前者を維持しようとするのだ。そして、身体も脳がリアルと感じた状態に合っていく。もし何かそこから外れそうなことが起こっても、元に戻そうとする力が働く。

要するに、今物理的な感覚を伴って感じている状態であろうが、頭の中で想像しているイメージだろうが、よりリアルに感じる方に対してホメオスタシスが働き、その状態を維持しようとする。

例えば、あなたはドローンの次世代機種を開発して、離島や過疎地への人・モノの輸送問題をより良く解決し、ビジネスでも成功するのがゴールだとする。でも現在のあなたはまだ大学生で、ビジネスの世界にも入っていない。ドローンの開発に携わったことはないが、工学系が専攻なので、機械いじりは得意と仮定してみよう。

さてこの時、ゴール世界の自分は、どういう風に想像するのだろうか?

もちろん職業のゴールを設定しているので、仕事の内容は具体的にイメージするのは当然だ。開発しようとしているドローンを思い浮かべるだろうし、開発する現場がどのような空間で、どんな人たちと作業をしているのかも想像するだろう。自分がどんな役割で、ドローンのどの部分を担当しているのかも想像するだろう。解決したい課題については、どこに住んでいるどんな人の課題を扱っているのか、それを解決するとどんないい効果が得られるのかも想像するだろう。ビジネスの成功というのは、金銭的にはどの程度のことをイメージしているのかも想像するだろう。

でも、それだけでは足りない。職業以外の人生の様々な側面も一つひとつイメージしていく必要がある。たとえば、

  • 家族との関係は?
  • ランチは誰と、どんな店で食べている?
  • 車は何を所有?
  • どこに住んでいる?どんな家に?部屋にはどんなものが置いてある?
  • 朝何時に起きて、何時に寝ている?
  • ディナーでよくいく行きつけのお店は?
  • 仕事着は?オフの時の服装は?
  • どんな趣味を楽しんでいる?
  • スポーツは何かやっているか?

ここで少し説明を加えておこう。

ゴール世界の自分を想像するというのは、一つには、未来の自己イメージをしっかり想像するということ。もう一つは、未来の自分がいる環境を想像するということだ。未来の自分と環境をイメージして、未来の自分が存在するのに相応しいコンフォートゾーンを体感するのだ。ただ映像としてイメージするだけではなく、五感を使って体感することが必要だ。

さらに言えば、その未来の自分は、いま欠点として自覚しているところは改善されているかもしれない。また、あなたのロールモデルになるような人の長所はきっといくつか取り入れているだろう。

そうすると、こんな状態が発生するはずだ。

 

  • 未来の行き先であるゴールはまだぼんやりしてよく分からないところもあるが、少なくとも進んでいく方向は分かっている。
  • 今とは明らかに違うゴール世界のコンフォートゾーンを頭の中の現実として体感している。
  • 今の自分に染み付いた行動の癖(ハビット)や判断の姿勢(アティチュード)は、新しくゴール世界のものに変わっている。

この状態が維持されていれば、ゴール世界に向かってホメオスタシスがしっかり働くということだ。

すると努力するという感覚なく楽しみながら、ゴール世界へ向かっていける。

でも実際やってみると分かると思うが、一人でこの未来をイメージするプロセスをやり切るのは結構大変だ。やはり信頼できる誰かがそばにいて、その人との対話の中でゴール世界をイメージしていく方が圧倒的にやり易い。

コーチとは、その役割を担える人のことである。(end)