目次
- 近づくと減少する推進力
- 推進力を取り戻すには?
- とはいえ、さらに先ってどこ?
- 思考の抽象度を上げる
- 利他を考える
ゴールは最初から上手く設定できないという理由のほかにも、ゴールを再設定しなければならない大事な理由があります。
(前回の話は、↓で。)
ゴールのその先へ
近づくと減少する推進力
それは、ゴールに近づいて来ると、ゴールへ向かう推進力が段々と落ちて来るということです。そして、確かにゴールには少しずつ近づいてはいても、いつまで経っても辿り着くことが出来ないということも起こり得ます。
推進力がなくなるというのを、輪ゴムを使って説明してみましょう。
どこのお家にもある輪ゴムに両手の人差し指を通して、指を肩幅くらいまで大きく離してみて下さい。すると、左右の指を近づけるような力を感じるでしょう。ここで、右人差し指がゴールの位置を表し、左人差し指があなたの今いる現在地だとします。
右指はその位置のまま、左指を少しずつ右指の方へ近づけていくと指にかかるテンションは下がり、元の輪ゴムの形くらいまで近づくとまったくテンションはなくなります。でもまだ2本の指はくっついていません。
こんな風にゴールに近づくと推進力がなくなってしまって、その先はなかなかゴールに辿り着けません。
困ったことになりました。ゴールに近づけば近づくほど、ゴールに向かうエネルギーは減少してしまうのです。
推進力を取り戻すには?
では、無事ゴールを達成するにはどうすればいいでしょうか?再び、輪ゴムを使って説明してみましょう。
右指がゴールの位置でした。左指はすでにある程度右指に近づいていて、輪ゴムが緩んでしまったので、右へ向かう推進力がなくなってしまったのでした。あなたは輪ゴムの力を使って左指を右の方へ動かしたいのですから、右指をさらに右方向へと移動させて、輪ゴムの高いテンションを取り戻せばいいのです。
右指はゴールを表していたのですから、ゴールをさらに先へと再設定すればいいということです。
要するに最初に設定したゴールを達成するまで推進力を保つためには、ゴールに近づいて来たら、早めにより先にゴールを再設定するということです。
とはいえ、さらに先ってどこ?
でも、最初にゴールを設定した時も現状の外側にゴール設定するのが難しかったのに、さらに先に再設定すると言われると少し困惑してしまうかも知れません。
そこで、「より先に」というのはどのように考えれば良いのかを見ていきましょう。
例えば、今、売上高が1億円に到達しそうな会社は、単に10億円を目指せばいいのでしょうか?
1億円を売り上げている時と10億円まで増えた時では、社員数や業務プロセス、扱う商材数や商材の種類は大きく変わっているでしょうし、社会に対する影響力も随分と違っているはずです。
自社を取り巻く状況がこれまでとは大きく変化していくと予想されるのに、ゴールの再設定が単に数字を大きくしただけのものでいいのでしょうか?
思考の抽象度を上げる
コーチングでは、抽象度を上げて思考して、新しいゴールを探すように促します。
抽象度というのは、物事を抽象化する度合いのことですが、例えば、「犬」とか「動物」とか物事を表す概念には階層性がある中で、その概念を定義する情報量の大小の度合いのことを言います。
「犬」の例で言うと、例えば、〇〇さんが「チコ」という柴犬を飼っていたとします。この犬は、兵庫県神戸市の〇〇さんの家に住む、△年△月△日生まれの「チコ」という名前の柴犬です。具体的に実在する個体で、とてもたくさんの情報を持った存在です。
その「チコ」から少し抽象度が上がると「柴犬」です。この「柴犬」というのは、いま地球上に存在するすべての柴犬だけではなく、過去と未来に全宇宙に存在する柴犬を含んだ概念です。もしこの宇宙の外にも柴犬がいれば、それも含みますし、「柴犬」と聞けば皆が頭の中でありとあらゆる「柴犬」を想起できる、抽象的な「柴犬」という概念です。
そして、さらに「柴犬」から順々に抽象度を上げていくと、柴犬 → 犬 → 哺乳類 → 動物 → 生物 となっていきます。ただし、上位の概念は、一つだけとは限りません。例えば、「犬」の上位概念は「ペット」でもよいわけです。犬と猫が同じレベルに並んでいれば、その上位概念が「ペット」であっていいわけです。
このように、抽象度が低いとそれは具体的で情報量が多い概念を表し、抽象度が高いと抽象的で情報量は少なくなります。
しかし、抽象度が高いと情報量は少ないのですが、潜在的に含まれる概念は多くなります。先ほどの例で言うと、「生物」の下には、チコやその他の犬はもちろんのこと、すべての動植物が含まれるのですから、それを「潜在的に多くを含む」と言うわけです。
利他を考える
さて、抽象度についての説明が少し長くなりました。話を戻すと、売上高1億円の会社が次に目指すゴールは、どんなものになるでしょうか?
抽象度が上がれば、よりたくさんのものを包摂することになると考えると、自社だけが売り上げを伸ばすことだけを考えるのではなく、従業員はもちろんのこと、取引先や株主、地域住民やもっと広く自社と何らかの形で関わりを持つ全てのステークホルダーの利益を意識したゴールを探していくという方向性があり得ます。
「相手を利する」という利他の発想で、ゴールを探してみるのです。ただし、どれも本気でなければ意味がありません。よく企業の会社案内などに、「全てのステークホルダーに優しい会社です」のような文言が踊っていますが、ゴールにするには本当に心からそう思って行動するつもりがあるのかが問われます。
こうして、より先のゴール設定には利他という観点が大事と理解できれば、あとは「他」に含まれる人の数を100万人、1千万人、1億人、10億人、100億人と増やしていけばいいのです。