目次
- ステップ・バイ・ステップ方式をマインドから考える
- マインドがフルに働かないステップ・バイ・ステップ方式
- 高いエフィカシーで乗り越える
- コーチング・フォワード方式とは
- 似ている結果、違いはマインドの使い方
私の愛車Raleighでの走行距離が1万キロを超えました。目標にしていた訳ではないのですが、それにしてもよく走ったものだと思います。
世の中の自転車乗りの中には強者がたくさんいるので、「1万キロなんて、まだまだ」という声が聞こえてきそうです。でも、12年前にクロモリ自転車のRaleigh Carltonを購入してから、週に一度のサイクリングで無事故でコツコツ積み上げた距離だから、とても感慨深いです。
しかも、この1万キロ走行の間にタイヤ交換は数回しましたが、走行中にパンクしたことが一度もないというのが驚きです。
ステップ・バイ・ステップ方式をマインドから考える
さて、今日お話ししたいのは自転車の話ではありません。「目標設定」についてです。
本当はコーチングでいうところの「現状の外側のゴール設定」の話に繋げていきたいのですが、今回は一般的な「目標設定」から話を始めます。
みなさんは何か新しいことを始めようとする時に、ステップ・バイ・ステップで着実にやって行こうとする方ですか?それとも、想像できる一番いい状態まで一気に辿り着ける方法を必死に探す方ですか?
ステップ・バイ・ステップ方式は着実で失敗が少なく、一つひとつ出来る事を増やしながら自信を徐々に付けていけるので、一般的には良い方法だと思われています。
けれども、認知科学を基礎としたコーチング理論からすると、ステップ・バイ・ステップ方式はマインドの使い方としては問題があると言わざるを得ません。
マインドがフルに働かないステップ・バイ・ステップ方式
ステップ・バイ・ステップ方式では、まずプロセスを細かく分けて、段階ごとに目標を設定します。その時に設定される目標は、明らかに「現状」の中の目標です。少しの手間と時間をかければ、すぐに手が届きそうな目標です。それは今のままの自分でも十分に達成できそうです。
目標設定に無理がなく、すぐに達成して次の段階へ進めそうなので一見すると良さそうですが、そんな風に上手くは行きません。なぜなら、その目標に向かって行動を起こそうとするエネルギーがなかなか湧いて来ないからです。それに、目標達成のために色々とクリエイティブに工夫して活動しようとしないからです。
目標が現状の中にある時には、そのようにマインドは働くのです。その結果、目標達成を先送りしたり、目標に近づいても一歩手前で足踏みしたりしてしまいます。
小学校の時、先生が「この問題を解いてみましょう!」と言った時、問題が簡単すぎるとあまりやる気がしなかった経験はありませんか?少し難しいくらいの方が、「よし、やってみるか!」とやる気が出てきたのではないですか?
難しそうな問題でも「自分なら解けるはず!」と思うと、俄然、やる気が出てくるものです。
さらに、ステップ・バイ・ステップ方式は「やる気」の問題だけではなく、本人の最大限の能力を引き出す仕掛けになっていません。
多くの人は高い目標を掲げて失敗するよりも、ほどほどの目標にして着実に進んでいく方が良いと考えます。高すぎる目標だと本人も怖気付いてしまって、目標から逃げ出したいと考える人もいます。
高いエフィカシーで乗り越える
でもこれは、高いエフィカシーを維持すれば、難なく乗り越えられるという可能性を全く考慮していません。
エフィカシーとは、自分が立てた目標を達成できると自信を持つ事です。自分にはその目標を達成する能力があると確信する事です(コーチングでは、自分のゴールに対する達成能力の自己評価と定義します)。
コーチング理論では目標を下げるのではなく、本人のエフィカシーをいかに高く維持するのかを考えるべきだと言います。
本人のエフィカシーが高ければ、目標をどんどん上げていく事で、ますます目標へ向かっていこうとするエネルギーが湧いてくるし、目標を達成するためにクリエイティビティを発揮して工夫するようになるというのです。
あなたは信じられるでしょうか?
本来は信じる、信じないの問題ではないのですが、ご自身で自覚的に体験したことがなければ、「そんなに上手くいくものか!」と疑問に思うのも理解できます。
コーチング・フォワード方式とは
では、そのステップ・バイ・ステップ方式でない方法というのは、どのようなものでしょうか?ここではその方法をコーチング・フォワード方式と呼びましょう。
コーチング・フォワード方式のポイントは、今の自分ではとても届きそうにないけれど、達成したくて仕方がない大きな目標を立てて、その目標を達成した時の自分や周りに見える景色をイメージしながら、自分は必ず達成できると信じて進んでいくというものです。
これはコーチングのゴールを達成していくプロセスと同じです(名前がコーチング・フォワード方式ですから)。
大きな目標を達成する方法は最初から分かっていなくてもいいのです。最終的に目標を達成するまでの道のりも分かりません。
けれども、マインドの中で目標達成した時の自分にアンカーしておくことで、いま現時点で何をすべきかは決まってきます。そして、今やるべき事として、それを実行することに集中するのです。
結果として、最初の段階を間もなくクリアするでしょう。
似ている結果、違いはマインドの使い方
そうなのです。ステップ・バイ・ステップ方式を否定していながら、結果的にはステップ・バイ・ステップのようになるのです。
「じゃあ、何が違うんだ!」と思う人がいるかもしれませんが、私がお話ししていたのは「マインドの使い方」です。
コーチング・フォワード方式はステップ・バイ・ステップで目標達成までのプロセスをイメージしていくのではありません。あくまで、目標達成した時の最終的な映像をイメージします。そこが大きく違います。
要するに、手前から順々にゴールに近づいて行くようにイメージしていくのか、先に未来のゴール達成時をイメージして、今に引き戻してやるべき事を具体的にイメージするのかの違いです。
マインドにとってはこの差はとても大きいのです。
コーチング・フォワード方式によって、目標に向かっていくための十分なエネルギーが生じ、少しでも早く目標に到達できるように工夫をし、目標達成までの過程で生じる様々な課題をクリエイティブに解決していけるのです。